近年サンポールを使って風呂での掃除方法を紹介している動画を見かけますが、水垢がキレイに落ちて真似してみようと、安易におこなうと危険な場合があります。
販売元のメーカーでは注意喚起していますが、サンポールに含まれている塩酸(9.5%)は、含有率が10%を超えると劇物扱いになるほど、本来は危険なものです。
使用方法を間違えると、素材を痛めるだけでなく人体にも影響が出るため注意する必要があります。
とはいえ、お風呂の水垢がキレイに落ちなくて悩んでいる方も多いのでは無いでしょうか?
この記事では、サンポールについての注意点やお風呂での使用が何で危険なのかを含めて、低リスクでサンポールを使う方法について紹介しています。
必ず何が危険なのかを理解した上で、サンポールを活用するようにしましょう。
- サンポールの基本情報と成分
- サンポールの一般的な用途と効果
- サンポールを使ってはいけない素材
- サンポールを風呂で使うのが危険な理由
- 希釈して使う方法
- サンポールでも取れない水垢の対処法
※トイレ以外の使用は用途外になりますので、自己責任でお試しください。
サンポールに含まれる成分や用途
サンポールの主成分は塩酸
塩酸は強酸性のため、皮膚や目に対する腐食性が強く、金属や一部の樹脂素材に対しても腐食や溶かしてしまう可能性があり、注意が必要です 。
塩酸は10%を超えると劇物扱いになるほど危険な成分ですが、サンポールには塩酸が9.5%も含まれています。
劇物にギリギリならない程度の塩酸を含んでいる多ため、市販の洗剤では危険度が非常に高いものになります。
サンポール本来の用途
サンポールの用途は以下の2つです。
- トイレの便器内の清掃
- トイレのタイルの清掃
それぞれの掃除手順です。
トイレの便器内の清掃
- サンポールを便器の内側に均一にかける。
- 数分間放置して、汚れが化学反応により分解されるのを待つ。
- トイレブラシでしっかりとこすり、汚れを除去。
- 水で洗い流して完了。
トイレのタイルの清掃
- サンポールを水で薄める(推奨される希釈比率:水100mlに対して2押し)。
- タイル表面にスプレーし、数分間放置。
- スポンジやブラシでこすり洗いを行い、汚れを取り除く。
- 水でしっかりと洗い流す。
サンポールをトイレ以外の使用は注意
トイレ以外での使用はメーカー非推奨となっており、用途外となります。
キッチン
キッチンでは、調理器具や食器など食品に直接触れるものが多いため、サンポールの使用は避けるべきです。塩酸が残留すると、健康に有害な影響を及ぼす可能性があります。
リビング
リビングルームの家具や床材にサンポールを使用すると、素材を腐食させるリスクがあります。特に木材やカーペットなどは、酸性洗剤に非常に敏感です。
洗濯機や乾燥機
洗濯機や乾燥機内でサンポールを使用すると、金属部品やゴムシールを腐食させ、機械の故障を引き起こす可能性があります。
サンポールを使ってはいけない素材
金属や特定のプラスチック、シーリング材に対しては、著しい損傷を引き起こす可能性があります 。
以下は各素材に対して、サンポールが及ぼす影響についてまとめています。
- アルミニウム:サンポールはアルミニウムを腐食させるため、アルミ製の器具や構造物には使用しないでください。
- ステンレス鋼:一見耐久性があるように見えますが、長時間の接触で錆びたり変色します。
- PVC(ポリ塩化ビニル):サンポールはPVCを変色させたり、脆くしたりすることがあります。
- アクリル:アクリル製品はサンポールの強酸性に弱く、曇りや割れが生じる可能性があります。
- シリコンシーラント:サンポールはシリコンシーラントを劣化させ、シーリング効果を失わせることがあります。
- コンクリート:ヒビが入ったり、溶ける場合があります。
サンポールを風呂で使うのが危険な理由
- サンポールの成分による危険性
- 塩素系洗剤との混合による有毒ガスの発生
- 入浴剤とサンポールの混合
- 樹脂・アルミ・ステンレス素材への影響
サンポールの成分による危険性
換気を行わずに使用すると、塩酸の蒸気を吸入して呼吸困難や喉の痛みを引き起こす可能性があります。
また、誤って皮膚に触れた場合、強い酸性のために皮膚がただれたり、炎症を引き起こすことがあります。
塩素系洗剤との混合による有毒ガスの発生
サンポールと塩素系洗剤を混合すると、有毒な塩素ガスが発生し、非常に危険です。
塩酸(HCl)と塩素系洗剤(次亜塩素酸ナトリウムなど)を混合すると、化学反応により塩素ガス(Cl2)が発生します。
このガスは非常に有毒であり、吸入すると呼吸困難や肺の損傷を引き起こす可能性があります。
日本中毒情報センターによると、塩素ガスは低濃度でも咳や喉の痛みを引き起こし、高濃度では肺水腫を引き起こす危険があります【引用: 日本中毒情報センター】。
入浴剤とサンポールの混合
意外と見落としがちなのが、サンポールと入浴剤が混ざってしまうことです。
塩素系洗剤だけではなく、硫黄や硫化鉄を含む入浴剤、いわゆる温泉の匂いや卵の腐ったような匂いがするものには特に注意しましょう。
これらの入浴剤がサンポールと混ざると、硫化水素という有毒ガスが発生しますのでご注意ください。
一方、炭酸ガスを発生させる入浴剤は比較的安全ですが、それでも硫黄を含む入浴剤や温泉土産の湯の花などは避けましょう。
樹脂・アルミ・ステンレス素材への影響
塩酸成分は、樹脂やアルミ、ステンレスなどの素材を腐食させ、素材の劣化や変色を引き起こす可能性があります。
特に風呂場の扉やシャワーヘッド、蛇口などの金属部品は酸に対して非常に敏感です。
サンポールを使用して風呂場のシャワーヘッドを掃除した際、塩酸が金属部分に浸透し、数日後に錆びが発生したり、変色が見られることがあります。
また、プラスチック素材の部品が脆くなり、ひび割れが生じることもあります。
サンポールを希釈して使う方法
希釈のメリットとデメリット
サンポールを希釈して使うことで、清掃効果を維持しつつ、素材や健康へのリスクを軽減できます。
ただし希釈することで洗浄力がやや低下するため、バランスが重要です。
樹脂や金属部品に対する腐食性が低減しますが、液剤が付着している時間や、対象素材の経年劣化等の状況により異なります。
また、希釈したからと言って安心せずに、サンポールを原液のまま使う際と同様に手袋の着用などは行いましょう。
希釈する際の具体的な手順
ゴム手袋、保護メガネを着用し、換気に気を付けて作業を行います。
以下は必要なものです。(5倍希釈時)
- サンポール(10ml)
- スプレーボトル等の洗剤容器
- 水道水(40ml)
スプレー容器にいれたまま、長期保存はしないようにご注意ください。
特に100円ショップなどで販売されているような容器は耐酸性ではないため、劣化しやすく本来の洗浄力が発揮されなかったり、容器が溶けて液剤が漏れ出す可能性があります。
※一時的な使用は問題ありません。
耐酸性の容器にサンポールを入れてから、水を入れて混ぜ合わせます。
液体が飛ばないようにゆっくりとかき混ぜて、均一に希釈できるまでしっかり混ぜ合わせましょう。
上記は5倍希釈の分量です。
より効果を高めたい場合は以下を参考ください
- サンポール(5ml)
- スプレーボトル等の洗剤容器
- キュキュットクリア除菌緑茶の香り(25ml)
- 水道水(120ml)
同じ5倍希釈で、食器用洗剤に含まれる界面活性剤の効果により汚れが取れやすくなります。
なるべく中性洗剤や弱アルカリ性の食器洗剤は使用せず、弱酸性をお使いください。
キュキュットクリア除菌緑茶の香りがおすすめです。
希釈したサンポールの使用方法
液剤が付着している時間や、対象素材の経年劣化等によって変色のリスクが発生します。
そのため、液剤が付いてから2分程度で全て流しきれる範囲で掃除を行ってください。
特に液剤をスプレーする際は思った以上に、広い範囲に液剤が付いている可能性があるため、シャワーで流す際は注意して広めに流しましょう。
慎重にしたい場合は、目立たない部分で試してみたり、スプレーするのではなく、スポンジ等に染み込ませてから対象物を擦る等の工夫をすることでリスクを低減できます。
風呂掃除におけるサンポールの代替洗剤
掃除が面倒だからといって、最初にサンポールを試すのではなく、お風呂用の酸性洗剤を先に試してみましょう。
以下では専用のお風呂用洗剤やクエン酸の代用について簡単にまとめています。
クエン酸の使用方法
クエン酸は天然由来の酸であり、アルカリ性の汚れに対して効果的に作用します。人や環境に優しく、家庭での使用に安全な洗剤とされています
水垢の除去
クエン酸を水に溶かしてスプレーボトルに入れます(クエン酸大さじ1に対して水200mlの割合が推奨されます)。
水垢が気になる部分にスプレーし、数分間放置します。
スポンジやブラシで優しくこすり、最後に水で洗い流します。
シャワーヘッドの掃除
クエン酸溶液をバケツに準備し、シャワーヘッドを浸します。
数時間浸け置きした後、ブラシでこすり洗いし、水でよくすすぎます。
クエン酸は風呂場の頑固な水垢や石鹸カスを安全かつ効果的に除去する優れた代替洗剤です。環境にも優しく、手軽に使用できる点が魅力です。
風呂用の酸性洗剤を使う
よほど頑固な汚れでない限り、お風呂用の酸性洗剤である程度の石鹸カス、水垢、などは除去できます。
おすすめの酸性洗剤
サンポールで落とせない汚れ(黒カビ)とその対策
サンポールは強力な酸性洗剤であり、多くの頑固な汚れを効果的に落としますが、すべての汚れに対応できるわけではありません。
特に酸に対して耐性のある汚れや、特定の化学反応を必要とする汚れには効果が薄いことがあります。
サンポールの主成分である塩酸は、カルシウム系の水垢や尿石、鉄錆などのアルカリ性汚れには効果的ですが、酸性の汚れや特定の有機物汚れには効果がありません。
石鹸カス(酸性石鹸)による汚れ
石鹸カスは酸性の汚れであり、サンポールのような酸性洗剤では化学反応が起きず、効果的に落とすことができません。
アルカリ性の洗剤(例:重曹、セスキ炭酸ソーダ)を使用すると、石鹸カスを効果的に分解・除去することができます。これにより、浴槽やシャワー周りの石鹸カス汚れをスムーズに落とすことができます。
カビ汚れ
カビは生物的な汚れであり、サンポールの酸性では除去が困難です。また、カビの根をしっかりと取り除かないと再発することが多いです。
塩素系漂白剤やカビ取り剤を使用することで、カビを効果的に除去することができます。ただしサンポールのような酸性の洗剤とは混ざると危険ですのでご注意ください。
油脂汚れ
油脂汚れは酸性洗剤では分解されにくく、特に風呂場の皮脂やボディオイルの残留物には効果が薄いです。
アルカリ性洗剤や酵素系洗剤を使用することで、油脂汚れを効果的に分解し、除去することができます。
サンポールでも落ちない水垢がある
サンポールは非常に強力な酸性洗剤ですが、酸性度が強力なだけでは落とせない水垢が中にはあります。
水垢を一つの汚れ、として紹介されていることが多々ありますが、実際は水垢汚れといっても、いくつか種類があります。
一般家庭で特に悩まされるのは「シリカ系の水垢」で、塩酸が含まれたサンポールでは溶けない性質を持っています。これを知らずに色々試した結果、落とせずにあきらめてしまう方も多くいます。
サンポールで水垢が落ちずにあきらめる前に、下記の記事をご参考ください。
サンポールを用途外で使うなら希釈が重要
サンポールは非常に強力な酸性洗剤であり、特定の用途では非常に効果的です。
しかし、その強力な成分ゆえに、使用する場所や素材には十分な注意が必要です。
特に風呂場での使用においては、健康被害や素材の損傷を引き起こす可能性があります。
風呂場の汚れには、適切な洗剤を選ぶことが重要です。石鹸カスやカビ、油脂汚れなど、汚れの種類に応じた洗剤を使用することで、効果的に汚れを落とすことができます。
この記事ではサンポールの危険性や希釈しての使用方法を紹介しました。
以下にこの記事で特に重要だった内容を箇条書きでまとめました。
- サンポールの主成分は塩酸であり、非常に強力な酸性洗剤である。
- サンポールは主にトイレ掃除に使用されるが、風呂場での使用はリスクが伴う。
- サンポールと塩素系洗剤を混合すると、有毒な塩素ガスが発生する。
- 風呂場の樹脂、アルミ、ステンレス素材にサンポールを使用すると腐食する危険がある。
- サンポールは、酸性汚れや有機物汚れに対しては効果が薄い。
- サンポール使用時は必ず保護具を着用し、十分な換気を行うこと。
- 風呂場の汚れの種類に応じて、適切な洗剤を選ぶことが重要。
- リスクを減らすには5倍希釈がおすすめ
- 弱酸性の食器洗剤を入れて洗浄力UP
- サンポールでも落ちない水垢は中にはある