汚れの性質(アルカリ性・酸性)を見極めて、正しい洗剤を選ぶ方法

掃除の基本は汚れの性質に対し、逆の性質の洗剤を使用することで、汚れを分解して落とします。

キッチン周りの油汚れは酸性の汚れ重曹などのアルカリ性の洗剤を使用する。シンクに付いた水垢はアルカリ性の汚れクエン酸などの酸性の洗剤を使う。

と、ここまでは日々掃除をする方なら知っている方がほとんどだと思います。

ありきたりな汚れには、何性の洗剤がいいのか分かるかもしれませんが、馴染みのない汚れはどっちの性質の洗剤が効果があるか判断できないですよね?

例えば、「外壁に付いたコケ」や「醤油のシミ」は何性の洗剤がいいでしょうか?

答えはどちらも「アルカリ性」の洗剤です。

特殊な汚れなどは調べて、専用の洗剤を使えば解決しますが、洗剤を使う機会が無くて余らせてしまうことも…。できれば手持ちの洗剤で代用して落とせれば、調べる手間やコストも抑えれます。

本記事では、掃除のためにわざわざ洗剤を1本購入したくない…。手持ちの洗剤で何とかしたい方のために、様々な汚れの種類に対して効果のある洗剤を判断できるようになるための知識を紹介しています。

※100%判断できるわけではありませんが、9割以上は判断できるようになると思います。

目次

汚れの性質(酸・アルカリ)を覚えるのは大変

このような汚れに対する洗剤のまとめ。をSNS等で見たことがあるかもしれませんが、記載されていない汚れがあった場合、何を使えば良いのか分からないと思います。

冒頭で例に挙げた、「外壁のコケ」や「醤油のしみ」など。どれにも当てはまりません…

効果のある洗剤が何性なのか?覚えれば問題ないですが、汚れの種類は大量にあるのでキリがなく、大変です。

また、調べて汚れに合った専用の洗剤が一番の近道ですが、別の汚れができる度に、洗剤が1本増え続けます…。時にはニッチ過ぎて洗剤がない場合も。

なるべく少ない種類の洗剤であらゆる汚れを落とせるのが理想だと思います。

洗剤の本数を減らして1本で代用して勧めることは、洗剤メーカーの営業として勤務する筆者の経験が理由にあります。

代用を勧める理由

洗剤メーカーが「○○用」と定めている商品でも、同じシリーズ品で別の用途でも中身が大差無いことがほとんどです。メーカーによっては「万能洗剤」と謳っていてもシリーズ内で万能タイプが4種類ある矛盾した商品もあります。

洗剤を間違えて使うとどうなる?

使う洗剤を間違えると以下の3つのようなことが起きます。

時間・労力・お金のムダ

汚れにあった洗剤でなければ、どれだけ長時間掃除しても、汚れが全く落ちず時間と労力・お金が無駄になります。せっかく購入した洗剤も意味をなさないため勿体ないだけです。

素材を傷める・変色の原因になる

誤って使用してはいけない素材に使うと腐食や変色が起こります。

例えば、表面加工していない木にアルカリ性の洗剤を使うと木がヤケて変色したり、トイレの尿石を溶かすサンポールのような強力な酸性洗剤を金属面に付けて放置していると腐食や黒く変色します。

汚れがさらに目立つ場合もある

キッチンの水垢を落とすために、クエン酸を活用される方も多いですが、使用する洗剤の順番が異なると、別の汚れに反応して、掃除前よりも白くなり、汚れたようになる場合もあります。

中和によって汚れが落ちるわけではない。

まず始めに、アルカリ性の汚れは酸性の洗剤で中和させて落とす。など自称プロの方々や洗剤メーカーでも説明されていたりしますが、実はこれは間違いです。

汚れの性質とは逆の成分を使うこと自体は正しいですが、「中和」しているから汚れが落ちているわけではない。ということです。

中和と汚れが落ちることは、ほとんど関係ありません。

自称お掃除のプロの方などが、中和作用によって中性になるから汚れが落ちる。というようなことを紹介していたりしますが、下記の記事(NHK(中和反応と塩の性質)から間違っていることが分かります。

酸と塩基がお互いの性質を打ち消し合うことを「中和」といい,この反応のことを「中和反応」といいます。中和反応が起こると「塩えん」と「水」ができ,塩は大きく分けて「正塩」,「酸性塩」,「塩基性塩」の3種類あります。また,酸から出た水素イオンと塩基から出た水酸化物イオンの数が過不足なく反応する瞬間を「中和点」といいます。ただし,「中和点」の水溶液が必ずしも「中性」であるとは限りません。

引用:NHK(中和反応と塩の性質)

例えば、油汚れは酸性の汚れだからアルカリ性の洗剤で中和させて落とす。と言われていたりします。

正しい表現はアルカリ性の性質によって中和したのではなく、分解や溶かすといった方が近いです。

下記論文では、はっきりと中和反応で汚れが取れるわけではないと発表されています。

通常の汚れとして存在する脂肪酸は水にはほとんど溶解せず、その水溶液が酸性であるとうことはないので、油性物質である脂肪酸を「酸性の汚れ」と呼ぶのは不適切である。しかも、これは主要な油性成分の中でも脂肪酸についてのみ適用できる表現であり、食用油脂や脂肪は遊離脂肪酸をほとんど含まないので、弱いアルカリとの中和反応で除去が進行することはない。

引用:洗浄における酸・アルカリ中和説の問題点

アルカリ汚れ・酸性汚れの判断基準

カビやヌメリなどの、菌や微生物の汚れを除くと汚れの種類は「アルカリ性の汚れ」と「酸性の汚れ」の2つですが、性質の判断基準に当てはめると、「有機汚れ」「無機汚れ」に分かれます。

アルカリ性の汚れ有機汚れ

酸性の汚れ無機汚れ

汚れを作っている成分が有機物か無機物かで異なります。

有機汚れとは生物の体を作る成分、つまり「生命の分子」を持ったものです。人の体を構成しているたんぱく質や脂肪、しょうゆなどの大豆から作られるものなどです。

対して無機汚れとは何かと何かが化合したもの。水垢や石などが当てはまります。

有機物の汚れは比較的柔らかいものが多く、逆に無機物の汚れは固いものが多いです。

有機汚れとは?

より詳しく分けると、

  • タバコ・大豆(しょうゆ)
  • 油や皮脂
  • 石鹸に含まれる脂肪酸
  • 外壁に付いたコケ

これらは全て生物の体を構成するもので作られています。

有機汚れの特徴はやわらかいものが多く、熱すると炭になります。

適した洗剤は「弱アルカリ性」もしくは「アルカリ性」です。

例えばタバコの場合、タバコの葉から作られており、生命の分子を持っています。有機汚れはアルカリ性が効くため、壁紙のヤニ汚れを落とす洗剤は全てアルカリ性で作られています。

人工的に作られるものが多い傾向があります。

無機汚れとは?

次に無機汚れは以下のようなです。

  • 水垢
  • カルシウム
  • 尿石
  • サビ

有機汚れとは違い、分子が化合してできた汚れです。

例えば、石鹸カスの汚れは水道水に含まれるマグネシウムと石鹸に含まれる脂肪酸が化合してできます。同様に水道水に含まれるカルシウムと二酸化炭素が化合し、ガチガチなカルシウム汚れになります。

無機汚れの特徴は固いものが多く、熱しても炭になりません。

適した洗剤は「弱酸性」もしくは「酸性」で、頑固な汚れが多いため、研磨剤の力も加えて溶かしながら削り落とすものもあります。

自然に作られるものに多い傾向です。

カビやキッチンのぬめりは?

塩素系の洗剤を使用するカビやキッチンのぬめりは、微生物や菌が原因です。

微生物や菌は生命の分子を持ったものなので、有機汚れに当てはまります。

キッチンハイターなどのヌメリ取り・カビ汚れに使用する除菌剤は次亜塩素酸ナトリウムが入ったアルカリ性の洗剤で、アルカリのph値も高いです。

アルカリのphが高いので油汚れなどにも効果がありますが、漂白成分が入っているため色が抜けるため、洋服のシミ取りには使えません。またサビ防止剤が入っている洗剤が少ないため、金属製品に使用すると腐食によってサビや変色することがあります。

余談ですが、お風呂用の強力なアルカリ洗剤(1,000円前後の商品)に使用されている、界面活性剤にはカビを死滅させる効果があるものもあります。

漂白成分が入っていないため、カビた部分の黒っぽい見た目は変わりませんが、滅菌状態になるため掃除しながら防カビ効果を得られる洗剤もあります。

中性は窓ガラスや二度拭き不要なものが多い

中性洗剤の特徴はアルカリや酸性に比べてすすぎやすいため、食器用洗剤に多く使用されています。

油汚れを落とす強力なアルカリ洗剤の場合、基本的に水拭き(二度拭き)が必要ですが、中性は不要です。

そのため、頑固な汚れは落とせませんが、日々の生活でついた軽度の汚れ落としに最適です。

また、強力な洗剤の場合、素材を変色させてしまうことがありますが、中性洗剤の場合は素材を損傷しないメリットと、肌荒れしにくい特徴があります。

界面活性剤により肌が敏感な方は直接触れると肌荒れすることもあります。

中性洗剤の代表的なものにはウタマロクリーナーや花王のクイックルホームリセットなどがありますが、その他には窓ガラス掃除用の洗剤などは、全て中性で作られています。

まとめ:有機汚れと無機汚れで洗剤の性質を判断する

お掃除のプロやお掃除検定の資格を持っている主婦の方など、間違った知識。

「中和」したから汚れが落ちているわけではないことや、汚れの性質の見極め方は生命の分子をもっているか・持っていないか?

生命の分子を持った有機汚れならアルカリ性の洗剤が効果あり。

逆の無機汚れなら酸性の洗剤が効果あり。

判断のつきやすい、水垢や油汚れなどは問題ないかもしれませんが、その他のニッチな汚れを落としたい場合には有機物か無機物かで判断してみてください。

その他の例

有機汚れにはアルカリ性か弱アルカリ性が効く

壁紙についたクレヨン(ロウ・顔料)やマジックのインク(染料・有機溶剤・樹脂)、ドアノブについた皮脂は有機汚れ。

無機汚れには酸性か弱酸性が効く

燃やしても炭にならない尿石は無機汚れ。

消臭面では、魚臭さは有機物のニオイなのでアルカリ性が効く。(重曹など)

尿石やおしっこのニオイは無機物なので酸性が効く。(クエン酸など)

というように判断もできます。

とはいえ、水回り以外の汚れ(一般家庭でできる汚れ)の大半は「有機汚れ」。つまりアルカリ性の洗剤で落とすものがほとんどです。

洗剤メーカーでは中性洗剤以外で、万能洗剤として扱っているものは「落とせる汚れの種類が多い」アルカリ性の洗剤を指します。そのため水回り以外の汚れでどちらか迷った際は、アルカリ性の洗剤を使っておくと高い確率で効果が得られると思います。

※本記事で紹介した見極め方から、洗剤を代用する際の注意点として、使用する洗剤の用途以外で問題が起きた場合はメーカー保証が効かない為、自己責任になることをご了承ください。

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